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【担当事件】トラックドライバー(運転手)の残業代請求 具体的事例の契約書を解説します。その2

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1 はじめに


 具体的事例をもとに解説をした方が伝わりやすいと思いますが、なかなか、そのような解説記事はないように思います。そこで、私が過去に担当したトラックドライバー(運転手)の残業代請求事件について、具体的事例の契約書をもとに解説をしたいと思います。

 基本給が低すぎる、実際の残業時間が長すぎる点が重要であった事例について解説します。

 

2 契約書の内容        


 契約書の内容は以下のとおりです。以下では、契約書の①~④ について解説します。

3 大型運転免許を持つトラックドライバーにしては基本給が低すぎる


 この労働契約書では、賃金の計算方法は日給制となっています。時間単価(≒時給)は基本給÷8(時間)の790円でした。これは、契約書作成当時の最低賃金程度でした。

 割増賃金の支払いとして適法といえるには、通常の労働時間の賃金(≒基本給)に当たる部分と時間外労働等に対する割増賃金に当たる部分とを判別できないといいけないとされています。

 本件の基本給は、大型運転免許を持つ者の賃金としては低すぎます。実質的には、「残業手当」や「深夜手当」の名目で基本給の一部が支払われていると考えられます。

 そうすると、通常の労働時間の賃金(≒基本給)に当たる部分と時間外労働等に対する割増賃金に当たる部分とを判別できないことになります。

 そのため、「残業手当」や「深夜手当」の支払いをもって、残業代を支払ったとはいえないことになる可能性が高いです。

 

4 労働時間にかかわらず「残業手当」などが支払われることが想定されていた


 この契約書を作成する際に、賃金は手取りで40万円くらいになると説明がされていました。そのため、労働時間にかかわらず、賃金が予め決まっているような部分がありました。

 残業手当や深夜手当が残業代の支払いだとすれば、労働時間が明確にならない時点で、賃金は手取りで40万円あるとはいえないはずです。

 そうすると、「残業手当」や「深夜手当」によって残業代を支払ったと言いにくいことになります。

 

4 働く時間の違いによって賃金がほぼ変わらない


 日給制ですので、月の就労日が変われば賃金が変わるはずでした。

 しかし、実際には、就労日数が違っても、支払われた賃金にほとんど変化がありませんでした。

 この観点からも「残業手当」や「深夜手当」は労働時間が増えたことに対する対価でなく、単に「残業手当」や「深夜手当」の名目で支払われているだけであり、時間外労働等に対する対価でないと評価されやすいものといえました。

 

5 極めて長時間労働であった


 残業手当2,963円は3時間分の残業代であり、月23勤務したとすると69時間程度の残業時間となります

 しかし、実際の月の残業時間は平均して120時間程度でした。

 残業手当が予定した残業時間より、実際の残業時間が長すぎます(乖離が大きすぎます。)。

 そうすると、残業手当が時間外労働の対価であると評価しにくいです。

 

6 まとめ


 以上が総合的に考慮され、「残業手当」や「深夜手当」として支払われた金員も残業代ではないと判断され、800万円を超える残業代が支払われることとなりました。

幸せな生活を取り戻しましょう