労働に関するお悩みはお気軽にご相談ください

tell-iconお電話での
ご相談予約はこちら

mail-iconメールでの
お問い合わせはこちら

LINE

トップページ

【労災】精神障害の労災認定基準の基本を説明します。

トップページ

1 はじめに


 ①脳・心臓疾患の労災認定基準の解説(【労災】脳・心臓疾患の労災認定基準の基本を説明します。 (fukuoka-roudou.com))をしましたが本日は、②精神障害の労災認定基準(001140929.pdf (mhlw.go.jp)について解説します。

 業務によって脳・心臓疾患になり死亡された場合を「過労死、業務によって精神疾患となって死亡された場合を「過労自死といいます。

 精神障害によって労災が認められるには以下の3つの要件に該当することが必要です。

1 対象疾病を発病していること。
2 対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること。
3 業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないこと。

 以下、それぞれ説明します。

 

2 対象疾病に該当するか検討する


 「対象疾病のうち業務に関連して発病する可能性のある精神障害は、主と
してICD-10のF2からF4に分類される精神障害である。」とされています。

F2からF4に分類は下記のとおりです(2r98520000011nq2.pdf (mhlw.go.jp)より引用)。

 

 例えば、「F32 うつ病エピソード」には、さらに分類があり、「F32.9 うつ病エピソード、詳細不明」の一つに「うつ状態、うつ病」、「F43 重度ストレスへの反応及び適応障害」には、さらに分類があり、「F43.1 外傷後ストレス障害」のひとつに「心的外傷後ストレス障害」(いわゆるPTSD)、「F43.2 適応障害」などがあります。これらを確認できるウェブページとしてICD10分類 1ICD10分類  (byomei.org)があります。

 対象疾病に該当するかについては診断基準(2r9852000001diw9.pdf (mhlw.go.jp))が存在していますので、これに該当する事実があるかを確認していく必要があります。

 

3 発病前おおむね6か月の間に業務による強い心理的負荷
が認められること


 業務による心理的負荷評価表の①「特別な出来事」に該当するか、②「特別な出来事以外」であって心理的負荷の強度が「強」に該当することが必要です。実務的には②で認定されることが大半だと思いますので②の説明をします。

 例えば、パワーハラスメントの場合で「強」になるのは、「強」に記載された事情がある場合です。

例えば、上司等からの言動によるパワーハラスメントの場合は、

・ 上司等から、次のような精神的攻撃等を反復・継続するなどして執拗に受けた
 ▸ 人格や人間性を否定するような、業務上明らかに必要性がない又は業務の目的を大きく逸脱した精神的攻撃
 ▸ 必要以上に長時間にわたる厳しい叱責、他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責など、態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える精神的攻撃
 ▸ 無視等の人間関係からの切り離し
 ▸ 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことを強制する等の過大な要求
 ▸ 業務上の合理性なく仕事を与えない等の過小な要求
 ▸ 私的なことに過度に立ち入る個の侵害

これらの発言があれば、要件を充たすことになります。なお、一定の行為を「反復・継続するなどして執拗に受けた」としている部分については、「執拗」と評価される事案について、一般的にはある行動が何度も繰り返されている状況にある場
合が多いが、たとえ一度の言動であっても、これが比較的長時間に及ぶものであって、行為態様も強烈で悪質性を有する等の状況がみられるときにも「執拗」と評価すべき場合があるとの趣旨である、とされています。

 

4 業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないこと


 前記2、3の要件を充たせば原則として労災認定されますが、業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したことが「医学的に明らか」と認められることになれば、労災認定がされないことになります。「医学的に明らか」でないと労災認定がされないことにはなりませんから、例外的に労災認定がされない途が残っているというイメージです。

 業務以外の心理的負荷については、業務以外の心理的負荷評価表をもとにⅢのレベルにある心理的負荷があれば、労災認定がされない可能性が出てきます。

 例えば、「① 自分の出来事」についてみると、「離婚又は配偶者と別居した」という事情があれば、これはⅢレベルの心理的負荷となります。これにより対象疾病を発病したことが「医学的に明らか」であれば労災認定がされないことになります。

 また、個体側要因とは、個人に内在している脆弱性・反応性であるが、既往の精神障害や現在治療中の精神障害、アルコール依存状況等の存在が明らかな場合にその内容等を調査する。
 業務による強い心理的負荷が認められる事案について、重度のアルコール依存状況がある等の顕著な個体側要因がある場合には、それが発病の主因であると判断することの医学的な妥当性を慎重に検討し、個体側要因によって発病したことが医学的に明らかであるか否かを判断することとなっています。

 

5 できるだけ早く診察を受けてください


 長時間労働等によって体調が悪化しているなと感じたらできるだけ早く受診してください。というのも、上で説明したとおり、発症前の1か月や6か月の期間の労働時間や負荷要因が考慮されることになります。発症の確認は、通常は、受診して、医師が発症を認めた最初の日になります。そうすると、受診が遅れると、本来考慮されるべきだった労働時間や負荷要因が考慮期間から外れることにより考慮されないという不合理な結果となってしまいます。とにかく、体調が悪くなったら受診していただきたいと思います。

 

幸せな生活を取り戻しましょう