当職が担当した事件において、離職票トラブルがあったため使用者(雇用主)を刑事告発をしました。使用者(雇用主)は略式起訴・有罪となりました。「異例」ということで報道されました。
- 【依頼の内容】
職場の環境に問題があったため、退職代行を利用して離職をされた労働者から離職票トラブルに関して依頼がありました。
- 【失業時に会社がしなければならない手続き】
離職後、労働者が、失業手当を受給する前提として、会社が、ハローワークに対して、離職票に関連する資料(離職証明書、雇用保険被保険者資格喪失届など)を提出しなければなりません。しかし、労働者に対する嫌がらせ目的などから、これらの資料を提出しないということが少なからず発生しています。
仕事を失い、収入が無くなった労働者からすると、「兵糧攻め」にあったようなかたちとなります。例えば、未払残業代などがあったとしても、失業手当を受給するために、離職票に関連する資料と引き換えに未払残業代の請求を放棄させられるような事態も生じます。
日弁連が令和5年2月16日に発出した雇用保険の抜本的な拡充を求める意見書によれば、日本では、全世帯のうち2~3割の世帯では貯蓄がないため、離職時に失業手当を受給できなければ、本当に、生活ができない事態が生じ得ます。憲法で保障された「生存権」を脅かす事態です。
- 【離職票トラブルによる労働者の不利益】
このような状況はあきらかに不正義ですので、手続きを怠る使用者(雇用主)に刑事罰を求めて告発しました。その結果、罰金の有罪判決となりました。
離職票に関連する資料(離職証明書、雇用保険被保険者資格喪失届など)を提出しなかったことをもって、刑事罰が科されたのはおそらく初めてであると思われます。
- 【異例の刑事罰と今後の社会に与える影響】
雇用の流動化が進む中で失業手当受給に関するトラブルは益々増えていくことが予想されます。労働者の「生存権」など基本的な権利に関わるところです。今回の件をきっかけにして、手続きを守らなければ刑事罰になると使用者(雇用主)が思うことで、手続きがしっかりされることを望みます。
以下は本件に関する報道記事です。