【標準的な賃金、トラックドライバー】令和2年4月24日付告示と令和6年3月22日付告示における「標準的な賃金」の変化について解説します。
1 はじめに
以前【標準的な運賃】トラック輸送では「標準的な運賃」が定められています。にて、トラック輸送では「標準的な運賃」が定められていることをご説明しました。
「標準的な賃金」を知ることは、どのくらいの賃上げ交渉をすることができるのかの判断材料になると思います。また、自社の賃上げが標準的な賃金の上り幅ほどないということであれば、労働者に配慮した経営がされていない可能性を示すと思われます。
標準的な賃金に関する告示は令和2年4月24日付告示と令和6年3月22日付告示の2つがありますが、この度、どのように内容が変わったのかについて、分かりやすいパンフレット(202410unchin.pdf)が発表されましたので、ご紹介いたします(以下の画像はこのパンフレットから引用したものとなります。)。
2 令和6年3月告示の「標準的運賃」の主な改正点
令和6年3月告示の「標準的運賃」の主な改正点は以下のとおりです。
①「荷主等への適正な転嫁」において最も注目すべきは「平均約8%の運賃引上げ」だと思います。みなさんは、令和2年から賃金が8%程度アップしていますか?していなければ、荷主等への適正な転嫁がされていないと言えそうです。
②「多重下請構造の是正等」では、下請け手数料(利用運送手数料)を設定(運賃の10%を別に収受)とされています。これは、下請けが多重になればなるほど手数料がかかってしまうため、適切に運用されれば、多重下請構造の抑止力になることが考えられます。
③「多様な運賃・料金設定等」では、有料道路を利用しない場合の割増等を設定が注目されます。会社の利益を出すために、高速料金を抑えようとして、ドライバーが下道を走らなければならず、長時間労働等のひずみが労働者に生じていました。有料道路を利用しない場合の割増等が設定されることにより、長時間労働が是正される可能性が高まります(荷主等から「高速を利用しないでいいよ、だから運賃減額して。」を言いにくくなりますし、運送会社も荷主等から有料道路を利用しない割増をもらっておきながら、労働者に「高速道路は使うな」はとても言いにくいと思います。)
3 距離制運賃表の比較
令和2年4月24日と令和6年3月22日の距離制運賃表の比較は以下のとおりです。ドライバーのみなさんはこれをご覧になってご自身の賃金が適正かどうかを判断する一つの材料になると思われます。
4 コメント
標準的な賃金という考え方があることにより、適切な運賃収入を会社は得ているのか、会社が必要以上に利益を貯めていないかについて検討することが可能となり、労使間の団体交渉においても、賃金交渉を上手く進めることができると思います。一度、標準的な賃金の内容を確認いただければと思います。