解決事例:定額の残業代を無効にして請求できる残業代の額を増やした事例
【残業代・パワハラ】
依頼主:30代・男性
【相談前】
相談に来られた依頼者は,タクシー業界で勤務している方でした。
相談時には、既にうつの症状を抱えていらっしゃいました。
お話しをお聞きしたところ、一日の所定労働時間が12時間とされており、残業時間は一日平均6時間程度でした。2週間連続で勤務することもあったとのことでした。会社の上司からパワハラもうけていたとのことでした。
定額で残業代が支払われており、その定額の残業代の金額は月100時間程度の残業を予定している金額でした(ご相談者に支給されていた定額の残業代の額とは違いますが、例えば、月の賃金が173,800円の方は、残業代を計算するときの時間単価が1000円になり、残業代は一時間あたり1250円になるのですが、定額の残業代が125,000円とされているときには、100時間の残業が想定されている定額の残業代の支払となります。)
【相談後】
1、精神疾患の労災認定
一日平均6時間の残業を月25勤務すると月の残業が約150時間となります。また2週間連続で勤務したということでしたので、これらが原因となって精神疾患(うつ病)にり患していると考えられました。
そこで、精神疾患の労災申請を行うようにしました。
労災申請をすると、労働基準監督署が労災に該当するかを判断します。その際に、調査復命書という書類を作るのですが、これには、労働時間がどのくらいだったのか、パワハラが存在したのかなど多くの情報が載っています。
この書類を個人情報開示請求をして取得し、裁判手続きにすれば、残業やパワハラの立証がしやすくなります。
2、定額の残業代を無効にして請求できる残業代の額を増やす
通常支払われている給料に既に100時間の残業代が含まれているという主張を会社がすることが考えられました。
この主張がみとめられれば、100時間残業をしていても新たに残業代を請求することはできないことになります。
しかし、100時間もの残業をさせるということは体を壊す可能性が大きく、過労死を生じさせる危険性があります。そのような合意は無効であるとする裁判例がいくつかありましたので、定額の残業代の支払いは無効であると主張することを考えました。
定額の残業代の支払いが無効になれば、時間単価が大きくなり(時間単価が1000円の人の場合には1730円となります)、請求できる残業代の額が大きくなります。
3、パワハラの立証のために元従業員から陳述書を取得
パワハラの立証のために元従業員から陳述書を取得しました。
【弁護士からのコメント】
裁判の中で高額の金銭を支払ってもらう和解をしました。
証拠を丁寧に準備し、定額の残業代についても丁寧に主張したことが高額和解に結びついたと思います。
依頼者も和解後体調が戻られました。それが何よりです。