労働に関するお悩みはお気軽にご相談ください

tell-iconお電話での
ご相談予約はこちら

mail-iconメールでの
お問い合わせはこちら

解決事例

【担当事件】福岡県古賀市で働くトラックドライバー(運転手)の残業代約200万円を未払賃金立替払制度により回収した件

解決事例

 

 

1 この事件のポイント


運送業界の2024年問題の中で、経営が上手くいかずに破産をしてしまう会社が増えていくと考えられます。破産をされてしまうと、例え、残業代請求をする権利があったとしても、ほとんどお金を回収できないことが多いです。しかし、会社が破産しても、国の制度である未払賃金立替払制度を利用して約200万円の残業代を回収した事例がありますのでご紹介いたします。

 

2 事案の概要


トラックドライバーのXさんは、2020年8月1日に、運送会社Y社に入社し、日々長時間時間に従事してきました。2022年4月30日、Xさんは突然Y社から懲戒解雇を言い渡されました。Xさんは、私のところに相談に来られましたが、ご相談をお聞きしたところ、800万円ほどの残業代請求が可能そうであり、また、懲戒解雇は無効である可能性が高そうでした。そこで、約800万円の残業代請求と解雇無効を争う労働審判を提起しました。しかし、ほどなくして、Y社は破産申立てをしました。Y社には見るべき財産はなく、破産手続きで残業代などを回収することは難しそうでした。

 

3 工夫したポイント


 ⑴ 未払賃金立替払制度の利用を考えました

 未払賃金立替払制度は、退職する6か月前より後に発生した未払賃金・退職金について、その8割を国が立替える制度です(ただし、労働者の退職時の年齢に応じて88~296万円の上限あり)。

 弁護士でも馴染みがない人も少なくないと思われる制度であるため、この制度を利用できることに気づかない場合もあるかもしれません。

 まず、この制度を利用しようと考えられるかが重要です。

 ⑵ 破産管財人に対して労働時間の立証を丁寧にしました

 会社が破産すると裁判所の指揮のもと破産手続きを取り仕切る破産管財人という人が出てきます。未払賃金立替払が可能かどうかを概ね判断するのは破産管財人です。破産管財人に対して、退職前6か月より後にたくさんの残業代があることを立証する書面を作成し提出しました。

 この会社では、タコグラフなどの証拠が揃っていなかったので残業の立証に苦慮しましたが、Xさんが、スマートフォンの位置情報を常にオンの状態にしており、その結果、グーグルマップのタイムライン履歴が存在したことから、これをもとに始業時刻、終業時刻、そして、休憩時間を拾い出し、丁寧に立証しました。

 ⑶ 不当解雇の争いをやめました

 当初、懲戒解雇の無効を主張していましたが、この主張が認められると退職日が後ろの方にずれることになります。そうすると、退職日の6か月前より後に、残業した期間が入らなくなってしまい、残業代の立替え払いが認められなくなる可能性がありました。そのため、不当解雇については争うことを辞めました。

 

4 約250万円の残業代の存在が認められ約200万円が支払われました


計算した残業代は以下のとおりとなりました。

ア 令和3年9月分 (支払期日:令和3年10月31日)  67万8041円

イ 令和3年10月分(支払期日:令和3年11月30日) 105万4627円

ウ 令和3年11月分(支払期日:令和3年12月31日)  19万2505円

エ 令和3年12月分(支払期日:令和4年1月31日)   15万0830円

オ 令和4年1月分 (支払期日:令和4年2月28日)   13万9466円

カ 令和4年2月分 (支払期日:令和4年3月31日)   12万1458円

キ 令和4年3月分 (支払期日:令和4年4月30日)   10万7048円

合計:244万3975円 

これを前提に8割の約200万円の未払い賃金が認められました。

 

5 まとめ


 最近、運送業界の2024年問題があるからか、経営が上手くいかずに破産をしてしまう会社が散見されます。その場合、残業代請求を諦めがちですが、最後まであきらめなければ回収できる可能性があります。一度、弁護士にご相談ください。

幸せな生活を取り戻しましょう