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解決事例

佐賀県三養基郡で働くトラックドライバー(運転手) 裁判で残業代約500万円が支われた事案

解決事例

1 この事件のポイント


運送業界の2024年問題の中で、トラック運転手(ドライバー)の労働条件が労働者に不利に変更され、残業しても、残業代がもらえなくなる可能性が高まっています。賃金を増やそうと長時間働いて体を壊す人もいます。そうならないようにするためにどうしたらいいのか、そのヒントを与えてくれる事件です。

 

 

2 事件の特徴


①契約当初の雇用契約書では、基本給26万円を支払うと記載されており、特に、残業代に関する記載がなかった

②その約2年後に、契約書の内容が「基本給15万円、定額残業手当11万円(80時間の時間外労働を含む。)」と変更された。

③変更した契約書に不本意ながらも署名をしてしまっていた。

④タコグラフはあったものの、タコグラフが作動する前や後に積み降ろしの時間が多くあった。

⑤始業と終業のタイミングで、社長に対し、携帯電話のメッセージで、「出発します」「運び終わりました」と送っていた。

⑥実際の残業時間(基本的に一日8時間を超える時間)が、ほとんど月で100時間を超えており140時間を超える月もあった。

 

 

3 解説


 ⑴ 2024年問題で運転手の賃金は減らされる??

物流業界では、2024年問題と呼ばれる問題があります。これまでは、実務上、労働時間の上限はないようなものだったのですが、法律が変わり、2024年4月1日から恒常的に月80時間を超えるような残業などをする(させる)ことができなくなります(月80時間の残業とは、1日8時間を超える残業時間が4時間あって(つまり、1日12時間働いて)、それが月に20日あるというイメージです。)。

そのため、これまでドライバー(運転手)に長時間労働をさせて利益をあげていた会社が、これまでと同じ物量を運ぼうとすると、多くのドライバー(運転手)を雇わないといけなくなります。そうすると、人件費がかかるため、会社は、一人当たりの賃金額が減らそうとする可能性があります。

このときの労働条件が適正に変更されればよいのですが、労働者に不利益に変更される可能性があります。そうならないように注意しないといけません。ではどうしたらいいのでしょうか?

 

 

 ⑵ 雇用契約書へのサインは慎重に!!

トラックドライバー(運転手)の方からご依頼を受けることが多いのですが、私の経験上、トラックドライバー(運転手)の方は、社長などから「ここにサインしといて!!」と言われ、特に内容を見ることなく、雇用契約書にサインしてしまっていることが多いです。そして、その契約書は労働者にとってとても不利なものだったということが後を絶ちません。

ですので、まず、社長などから契約書などの書類にサインを求められるときには、一度、持ち帰って、サインを本当にしていいのか、弁護士などに確認した方がいいです。

 

 

 ⑶ 不利益な雇用契約書にサインをしてもセーフな場合がある!!】

ただ、なかなか弁護士などに事前に確認するのは難しいところもあります。不利益な雇用契約書にサインをしたら、もうどうしようもないのでしょうか?

いいえ、そんなことはありません。労働法は労働者を守る観点から、契約書にサインをしても、それが労働者の自由な意思によってサインされたのでなければ、基本的に、その契約書は有効とは考えないことになっています。

すごく不利益な内容の契約書だとわかっていれば、労働者は、普通はサインしません。サインするときに社長などから「サインしないと雇い続けられないよ」と言われたら、労働者はサインせざるを得ないかもしれませんが、それは、労働者の自由な意思でサインしたということにはならないでしょう。

このように、労働者が自由な意思でサインしていないことを証明できれば、労働者は自分に不利な契約書に拘束されません。

この件では、もともと、「基本給26万円」だったのが「基本給15万円、定額残業手当11万円(80時間の時間外労働を含む。)」と変更されました。もともとの契約内容なら、80時間残業をすれば、15万円をプラスでもらえたのですが、変更後の内容なら80時間分ただ働きとなります。また、80時間の時間外労働は過労死ラインといわれており、生命身体に危険を及ぼす可能性が高い残業時間です。このような極めて大きい不利益を労働者が自由な意思で受け入れるはずがないと主張しました。それが裁判所に受け入れられ、本件では、当初の契約の内容で残業代が計算されることになりました。

 

 

 ⑷ 証拠がなくても大丈夫なの?

「残業を立証する証拠がないから残業代を請求できない」と考えていらっしゃるトラックドライバー(運転手)の方が少なくありません。

しかし、トラックドライバー(運転手)の場合には、会社にタコグラフが保管されているのが普通です。それを開示してもらいますので、証拠がなくても問題はありません。

ただ、タコグラフは運転開始から運転終了までを記録するものですから、その前後の時間については、別途証拠で立証する必要があります。今回の件は、始業と終業のタイミングで、社長に対し、携帯電話のメッセージで、「出発します」「運び終わりました」と送っていたという事実があったため、この携帯メッセージの証拠からタコグラフの前後の労働時間も立証することができました。

 

 

 ⑸ 長時間労働は命を奪い、精神を壊す。弁護士にご相談を。

1日8時間を超える労働時間などが月に80時間あると脳心臓疾患になる可能性が高まります。1日12時間労働(ということは8時間を超える時間が4時間)の人が月に20日働くと、恒常的に月80時間の時間外労働となります。このくらいの残業をされている方がいらっしゃいましたら、直ちに、労働環境を改善した方がいいです。弁護士にご相談ください。

また、月100時間の残業があるとうつ病などの精神疾患になりやすくなります。精神疾患の場合には、直ぐに、体調が悪化するというわけではないので、だましだまし長時間労働を続ける方が少なくないですが、一度、うつ病などになれば、回復するのに相当な時間を要します。こちらも、直ちに、労働環境の改善のために弁護士に相談  された方がいいです。

楽しく生きるために働いているのに、働くことで楽しさを感じられなくなったり、命を失ったりするのは本当に本末転倒です。

少し、体調に問題があるなと感じたり、そうでなくても、月の労働時間が長いなと感じたりしたら、弁護士にご相談ください。私もそうですが、最初の相談(15~30分程度)は無料で、かつ、電話などで対応しています。お気軽にご相談ください。

 

幸せな生活を取り戻しましょう