【解雇、会社が破産、残業代】会社が破産しても未払賃金立替払制度によって賃金・割増賃金・退職金の支払いを受けることができる場合あります。
1 はじめに
労働者が会社で働いてたら、突然、会社が破産をすることがあります。
その場合、破産手続開始前3か月間のものは財団債権として優先的な支払いの対象となるため、回収できる可能性がある程度あります。
しかし、労働者の3か月間の賃金を支払えるだけの財団が組めなかったり、3か月より前の賃金については、破産手続きで回収するのは事実上困難な場合が多いです。
その場合に頼れる制度があります。未払賃金立替払制度です。この制度の概要や注意点を以下説明します。
2 未払賃金立替払制度の要件
以下①~⑦の要件を記載しますが、要件ごとに更に注意が必要なことがある場合にはその都度気指します。
① 事業主が、労災保険の適用事業場で、1年以上の事業活動を行っていたこと
→設立1年未満の会社では、この制度が利用できないため、できれば、入職する際に、1年以上の事業活動を行ってきたかは確認したいところです。
② 事業主が倒産したこと(法律上の倒産だけでなく、中小企業の場合は労基署長の認定による事実上の倒産でもよい)
→法律上の会社の破産申立てを労働者がすることは事実上ほぼできないです。会社の社長の行方がわからなくなったときには、中小企業の場合であれば、労働者が労基署長に対して、事実上の倒産かどうかの判断を求めるかたちで手続きを進めていくことができます。
③ 請求者が労基法上の労働者であること
→例えば、個人事業主のように働いているトラックドライバーなどで労働者性が問題となります。
④ 請求者が、各倒産手続きの申立て、または、「事実上の倒産」の認定申請が行われた日の6か月前の日から2年間の退職であること
→各倒産手続きの申立て、または、事実上の倒産の認定申請日よりも前に退職していたとしても、これらから6か月以内であれば、制度の利用が考えられます。
170530.2.労働者健康安全機構.indd (johas.go.jp)より引用
⑤ 定期賃金、退職金が未払いであること(総額2万円未満は対象外)
→ボーナスは対象となりません。
⑥ 基準退職日の6か月前の日から立替払請求日の前日までに支払期日が到来していること
→以下の図がわかりやすいです。
170530.2.労働者健康安全機構.indd (johas.go.jp)より引用
⑦ 破産手続開始決定日(または「事実上の倒産」の認定日)等の翌日から2年以内に立替払い請求が行われること
→この要件が問題となることはあまり考えられないように思います。
3 立替払いされる金額
立替払いされる金額は、未払賃金総額の100分の80の額です。ただし、立替払の対象となる未払賃金総額には、退職日の年齢による限度額があり、その限度額を超えるときは、立替払される金額は限度額の100分の80となります。
170530.2.労働者健康安全機構.indd (johas.go.jp)より引用
例えば、退職日の年齢32歳、未払賃金総額170万円(定期賃金50万円、退職手当120万円)の場合、未払賃金総額の170万円が、30歳以上45歳未満の限度額220万円を超えていないので、立替払額=170万円×0.8=136万円となります。
4 残業代等がある場合の注意点
精神障害の労災認定基準では、長時間労働によって認定を得ようとしても、求められる時間外労働時間が長いことから認定がされない可能性があります。
12日連続勤務(深夜時間帯に及び、かつ、1日当たりの労働時間が特に短い場合を除く)であれば、業種によっては、比較的ありうると考えられますので、この観点からの検討も必要でしょう。