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【損害賠償請求】トラックドライバー(運転手)の事故により会社に損害が生じても賠償義務は減免され得ます。

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1 はじめに


 トラックドライバー(運転手)が、業務中に交通事故を起こし、トラックなどの修理費用などの損害が会社に発生した場合、会社が、その損害を労働者に負担させようとすることがあります。しかし、判例上は、労働者に対する損害賠償請求は制限されることが大半です。どのような場合に損害賠償請求が限定されるか確認してみましょう。

 

2 報償責任という考え方があります


 最高裁判例(茨城石炭商事事件・最一小判昭和51年7月8日民集30巻7号689頁)では、使用者がその事業の執行につきなされた被用者の加害行為により直接損害を被り、又は使用者としての損害賠償責任を負担したことに基づき損害を被った場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において被用者に対し損害の賠償又は求償の請求をすることができるものと解すべきとされています。

 これは使用者が労働者の労働によって経済的利益を得ていることから生じる報償責任の要請を考慮し、信義則(民法1条2項)に基づき、使用者の損害賠償請求や求償権の行使を制限するものです。

 

3 特にトラックドライバーの場合は制限されやすいです


最高裁判例(福山通運事件・最判令和2年2月28日民集74巻2号106頁)の裁判官三浦守の補足意見では「事業者がその許可を受けるに当たっては、計画する事業用自動車の全てについて、自動車損害賠償責任保険等に加入することはもとより、一般自動車損害保険(任意保険)被用者が使用者の事業の執行について第三者に加えた害を賠償した場合における被用者の使用者に対する求償の可否を締結するなど、十分な損害賠償能力を有することが求められる(「一般貨物自動車運送事業及び特定貨物自動車運送事業の許可及び事業計画変更認可申請等の処理について」(平成15年2月14日付け国自貨第77号)参照)。」「特に、使用者が事業用自動車について任意保険を締結した場合、被用者は、通常その限度で損害賠償義務の負担を免れるものと考えられ、使用者が、経営上の判断等により、任意保険を締結することなく、自らの資金によって損害賠償を行うこととしながら、かえって、被用者にその負担をさせるということは、一般に、上記の許可基準や使用者責任の趣旨、損害の公平な分担という見地からみて相当でないというべきである。」と述べられています。

 そのため、保険で賄われるべき部分であれば、労働者が負担しなければならないことには通常ならないのではないかと考えられます(ただし、免責部分の範囲などは保険によって違いがありますので、保険の内容を検討する必要があるでしょう。)。

 

4 個別具体的な判断が必要ですので弁護士にご相談を


 ただし、労働者が損害賠償義務をどの程度負うのかは、「事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情」の考慮が必要です。

 ただ、(この説明だけでは全くイメージをもっていただけないため)語弊を恐れず言えば、軽過失の事案であれば、損害賠償義務は免責されるか、多くとも4分の1を超えることはないのではないかなと思います。

 以上を前提に、損害額、長時間労働により労働者の注意力が減退するような状況ではなかったのか、労働者が注意していれば事故は回避できたのか(回避しやすかったのか)などいろいろな事情が考慮されることになると思います。

 この考慮は複雑であるため一度弁護士にご相談ください。

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