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残業代請求

【担当事件】福岡県糟屋郡で働くトラックドライバー(運転手) 労働審判で残業代800万円が支われた事案

残業代請求

1 この事件のポイント


 この事案のポイントは1つです。残業代請求期間すべてについてデジタルタコグラフなどの客観的証拠がなくても、デジタコがある期間の労働時間を前提に、デジタコがない期間の労働時間を推計する方法によって残業代請求が認められた事案です。

 なお、この事案は、事案の本質を損なわない限りで事案を変更しています。

 

2 事案の概要


本件は、福岡県糟屋郡に営業所がある運送会社Yで働いていたトラックドライバーXが、過去1年10か月分の残業代等を請求したものです。

事案で特徴的だったのは、会社から開示されたデジタコは、請求期間の一部しかなく、労働時間の立証が少し難しかったという点でした。

通常、弁護士が代理人となり、会社に対して労働時間を明らかにする証拠を求めれば、請求期間に対応したデジタコが開示されるのが一般的です。

しかし、この会社の場合、請求期間(令和元年7月~令和3年7月)2年1ヵ月(25カ月)のうち、7か月分しかデジタコを開示しませんでした。

その結果、デジタコが開示された部分の残業代の平均値(約52万円)を計算し、デジタコがない期間はこの平均値分の残業代が発生したはずだと主張しました。

 

3 コメント


 ⑴ 労働時間を把握する義務が使用者にはあること

使用者(雇い主)には、労働時間を把握する義務があるとされています。そのため、本来であれば、タイムカードなど労働時間が明らかとなる証拠が存在し、かつ、それを保持していないといけません。労働基準法では2020年4月以降原則5年(当分の間は3年)、タイムカードなどの証拠を保管することを義務付けています(労基法109条、143条1項)。

 

 ⑵ 労働時間の推計によって労働時間が認定されることがあること

しかし、実際には、使用者がタイムカードなど労働時間に関する資料を開示しない場合があります。その結果、労働時間の立証が難しくなり、労働者に不利益が生じうるのですが、使用者が自分の義務を果たしてなかったことにより、その不利益が労働者に生じていいはずがありません。

そこで実務では「推計」という考え方がとられます。具体的には、客観的な証拠がなかったとしても、これくらいは働いていたであろうと考える、という方法をとります。

ただ、何でもかんでも推計してもらえるわけではなく、やはり、「客観的な証拠はないけれど、これくらいは働いていると考えられるな」と裁判官に思ってもらう必要があります。

本件に即していえば①デジタコが開示された時期の労働時間はデジタコによってしっかり立証できたこと、が重要ですが、さらに考慮が必要なのが、②デジタコが開示された期間と開示されなかった期間において働き方に変化がないこと、を主張立証する必要があります。

幸い、この件では②については当事者間に争いがなかったため、デジタコが開示されなかった時期についても推計をしてもらうことができました。

ですので証拠がないからといってすぐに諦める必要はありません。一度、弁護士にご相談いただいた方がいいと思います。

 

幸せな生活を取り戻しましょう