【労災】精神障害の労災認定基準のうち重要な時間外労働時間について説明します。
1 はじめに
【労災】精神障害の労災認定基準の基本を説明します。 (fukuoka-roudou.com)の記事を記載しましたが、心理的負荷の事由として中心的になるのは、労働時間であり、とりわけ、時間外労働時間の長さです。
脳・心臓疾患の労災認定基準(【労災】脳・心臓疾患の労災認定基準の基本を説明します。 (fukuoka-roudou.com))では、
① 発症前1か月間におおむね100時間
または
② 発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間
を超える時間外労働が認められるかを確認します(なお、②の具体的考え方は、上記ページの「4 労働時間を確認する」に記載しています。)。
他方で、精神障害の労災認定基準では、端的に言えば、脳・心臓疾患の労災認定基準よりも長い時間外労働時間が求められます。具体的には以下のとおりです。
2 求められる時間外労働時間
以下の時間外労働時間が認められれば、労災認定基準において求められる精神的負荷が認められることになります。
⑴ 発病直前の1か月におおむね160時間を超えるような、又はこれに満たない期間にこれと同程度の(例えば3週間におおむね120時間以上の)時間外労働を行った
⑵ 発病直前の連続した2か月間に、1月当たりおおむね
120時間以上の時間外労働を行った
⑶ 発病直前の連続した3か月間に、1月当たりおおむね
100時間以上の時間外労働を行った
の3つの場合です。⑵⑶は、2か月ないし3か月を平均しておおむね120時間~100時間を超えるのでは足りず、各月においておおむね120時間~100時間を超える必要がある点が、脳・心臓疾患の労災認定基準の考え方と異なっており、注意が必要です。
3 求められる時間外労働(時間に関わる要件)
その他、時間外労働に関わる要件には以下のようなものがあります。
① 仕事量が著しく増加して時間外労働も大幅に増える(おおむね倍以上に増加し1月当たりおおむね100時間以上となる)などの状況になり、業務に多大な労力を費やした(休憩・休日を確保するのが困難なほどの状態となった等を含む)
② 1か月以上にわたって連続勤務を行った
③ 2週間以上にわたって連続勤務を行い、その間、連日、
深夜時間帯に及ぶ時間外労働を行った(いずれも、1日当たりの労働時間が特に短い場合を除く)
なお、③の2週間以上にわたって連続勤務とは、14日以上ではなく12日以上と理解されていることに注意が必要です。
4 恒常的長時間労働がある場合
「恒常的長時間労働」という概念が若干難しいのですが、これは特定の日を起算日として、それから1ヵ月以内の時間外労働がおおむね100時間となる場合を「恒常的長時間労働」と呼びます。
次の①~③の場合には当該具体的出来事の心理的負荷を「強」と判断する。
① 具体的出来事の心理的負荷の強度が労働時間を加味せずに「中」程度と評価され、かつ、出来事の後に恒常的長時間労働が認められる場合
② 具体的出来事の心理的負荷の強度が労働時間を加味せずに「中」程度と評価され、かつ、出来事の前に恒常的長時間労働が認められ、出来事後すぐに(出来事
後おおむね10日以内に)発病に至っている場合、又は、出来事後すぐに発病には至っていないが事後対応に多大な労力を費やしその後発病した場合
③ 具体的出来事の心理的負荷の強度が、労働時間を加味せずに「弱」程度と評価され、かつ、出来事の前及び後にそれぞれ恒常的長時間労働が認められる場合
5 まとめ
以上のように、時間外労働時間は多角的に見ていく必要があります。全ての観点から網羅的に検討しましょう。