【労災、担当事件】労災認定されても補償が十分でない可能性があります。給付基礎日額が適正かどうかを検討すべきです。
1 はじめに
労災認定がされると一安心ですが、本当に支払われるべき補償額が支払われていない可能性があります。給付基礎日額が誤っているということが一定程度あるからです。特に、固定残業代が支払われていたものの、その支払い方が違法であり、本来支払うべき残業代額が多くなるということがあります。
これは、過労死・過労自死の事案だけでなく、事故労災の事案でも問題となります。
当職が担当した事件で、給付基礎日額を審査請求で主張し、認められた事件がありますので、紹介します。
2 事件の内容
事故労災の事案でしたが、基本給約10万円、固定残業代約13万円、固定残業代は月80時間分の割増賃金とする旨が雇用契約書に記載されていました。
これは、長時間労働を助長するものであり、残業代の支払いとしては無効であると主張しました。(なぜ、無効となるかについては、【担当事件】トラックドライバー(運転手)の残業代請求 具体的事例の契約書を解説します。その1などをご覧ください。)
会社側も、その主張を受け入れた結果、ひと月、概ね10万円を超える残業代が支払われることになり、合計約150万円の割増賃金が追加で支払われました。
この支払により、労災事故直近3か月で約30万円の賃金が増額されることになりました。
これを受けて、労災支給決定に対して審査請求を行い、給付基礎日額に誤りがあると主張しました。
給付基礎日額は、直近3か月の賃金合計額を3か月の暦日数(分かりやすくするため、ここでは「90日」としましょう。)で割り算出します。
そうすると、給付基礎日額は、30万円÷90日=3,333円アップします。
休業期間1年あったとすれば、3,333円×365日=約120万円程度追加で休業補償給付金が支払われる計算になります。この違いは結構大きいです。
3 コメント
特に会社に資力がない事案では、会社に対して残業代を請求することは事実上できなくなりますが、労災保険は資力の問題が生じないので、回収はできます。労災認定がされた方であっても、一度、労災認定内容に問題がないかを弁護士にご相談された方がよいかと思います。