【価格交渉】トラック運送事業は価格転嫁率が全業種で最下位。より価格交渉の充実が望まれます。
1 はじめに
中小企業庁では、エネルギー価格や原材料費、労務費などが上昇する中、中小企業が適切に価格転嫁をしやすい環境を作るため、2021年9月より、毎年9月と3月を「価格交渉促進月間」と設定しています。各「月間」終了後には、多数の中小企業に対して、主な取引先との価格交渉・価格転嫁の状況についてのフォローアップ調査が実施されており、これについて確認してみようと思います。
価格交渉促進⽉間(2024年3⽉)
フォローアップ調査結果→20240621002-ar.pdf (meti.go.jp)
2 トラック運送事業は価格転嫁率が最下位です
下記の表のとおり、トラック運送事業では「価格交渉は行われたが、全く転嫁できなかった企業の割合」が19.7%と全業種別で最も高く、順位は最下位です。
ただ、2023年9月時点では、28.9%でしたから、10%近く改善しています。その意味で、業界の中では転嫁率は低いものの、改善傾向にあるといえます。
3 全業種では46.1%のコストが転嫁されています
下の図を見ますと、発注企業からの申し入れにより価格交渉が行われていることが分かります。
全業種の価格転嫁状況を確認しますと、46.1%のコストを価格転嫁できていることが分かります。19.6%の企業では、10割のコストを価格に転嫁できています。交渉上手なのでしょうか。どのようなノウハウがあるのか気になるところです。
転嫁したコストの要素別では、原材料費が47.4%に比べ、労務費は40.0%にとどまっています。労務費は企業内の自助努力によって改善すべきという考えが強いのかもしれません。
4 トラック運送事業でも価格交渉は約7割の企業で行われています
トラック運送事業の調査結果を見ますと、約7割の企業で価格交渉が行われているようです(下図左側の青色①②部分)。
アンケート回答企業からの具体的な声の部分には「『労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針』を、発注企業側から提⽰してもらった。その結果、円滑に価格交渉を進めることができた。」という記載があります。これ(romuhitenka-1.pdf (jftc.go.jp))は公正取引委員会が策定したものです。
例えば、発注者側で採るべき行動として、
受注者として採るべき行動として、
などが記載されています。
5 賃金アップのために発注者に対する働きかけも視野に
「運送代金が上がらないから賃金が上がらない」と言われることがあるかもしれません。その側面は確かにありますが、あなたの会社の経営者は、適切に価格交渉や価格転嫁をしているでしょうか?この点についても視野にいれて、賃上げ交渉をする必要があると思います。