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セクハラ

【セクハラ】非性的部位への接触、セクハラ発言、セクハラ環境の事案と損害額を紹介します。(その1)

セクハラ

1 はじめに


 仕事中にセクハラに当たると考えられる言動があったとしても、それが胸などの性的部位に対する接触でない場合には、損害賠償が認められるのか、また、認められたとして損害額がいくらになるのかがはっきりしないと感じる方がおおいのではないでしょうか?

 そこで、この記事では、性的部位に対する接触ではないセクハラ事案(非性的部位に対する接触、発言、環境によるセクハラ)においてどの程度の損害賠償が認められたのかについて、できるだけコンパクトに関連裁判例を紹介します。

 

2 裁判例


 ⑴ 東京高判令和5年9月7日労働判例ジャーナル142号52頁 損害33万円

  ア 事案

・被害者X(女性)と加害者Y(男性)は同僚という関係であり、Yの言動は以下のとおりであり、いずれも不法行為と認定されています。

①露出行為:Yが、歓迎会二次会のカラオケ店において、自己のズボンのベルトを緩めてボタンを外し、チャックを下げ、自然にズボンが脱げる状態にして歌に合わせて踊ったために、複数回にわたり、足の付け根辺りまでズボンがずり落ち、自己の着用していたステテコを露出させた。

②発言1:Yが、「(自分の)ちんちん小さいねん」との発言、大阪の風俗店で行っているサービスについての発言「大阪ではもっと良いトップレスの店がある」との発言、ベビーシッターの話題に関連して、「おっぱい飲んでねんねしてはいらんのや」との発言をしたもの。Xを含む雑談の中であえて不必要な性的話題を持ち出し、執務に関連しない風俗店のサービス内容や自身の男性性器の大きさにまで言及し、ベビーシッターの話題に関連して「おっぱい」などの言葉を含む性的な言動をするものであった。

③発言2:研修後の懇親会において、Xが氷かワインを運んできてくれた際に、Yが「ありがとう」に加えて、「Dちゃん可愛いところあるやんか。」、「普段からそうしてや。」などと発言したもの。

④発言3:B警部の送別会において、男と女の違いを尋ねるXの問い掛けに対し、Yが「これはセクハラに当たるかもわからんけど、男はオチンチン付いとんのや。それだけでも違うやないか。」、「チンチン付けてたら男らしさも必要や。」、「女性は違うやろ。優しさちゅうのもあるやろ。」、「女性はかわいいとか、やさしいとかあるやん。それぞれの特長を生かして仕事もせな。」、「(Xも)かわいいとことかあるやん。」などと発言したもの。

  イ 損害額

Xは、Yによる「上記一連の不法行為があった後、平成27年3月に出勤できなくなり、その後一度職場復帰するも症状が悪化し、再び同年4月16日から出勤できなくなり、同月18日にメンタルクリニックを受診して「抑うつ状態、身体表現性障害」との診断を受け、通院を開始したこと、その後徐々に回復し、同年5月26日に職場復帰となり、令和元年当時、2週間に1回通院し、指導区分措置を受けて1時間の時短勤務となっていたこと、さらにその後、令和2年夏からはフルタイム勤務となったが、通院は継続していることが認められる」と認定したうえで、慰謝料30万円、弁護士費用3万円の損害賠償を認めています。

 ⑵ 東京地判令和2年3月3日労働判例1242号72頁 損害額5万円

  ア 事案

・被害者X(女性、昭和63年生まれ、派遣社員)、加害者Y(昭和36年生まれ、男性、専務執行役員)

・YはXに対して、六本木駅のホームでXが手を払って拒否したにもかかわらずXの肩に手を回そうとした、また、Yがこの際Xの肩に複数回触れた。

  イ 損害額

Yは、派遣労働者であるXが執行役員であるYに対して拒否の意思を示すことは容易ではないことは明らかであるのに,XがYに対して拒否する意思を明確にしていることを意に介することなく複数回原告の肩に手を回そうとしたものであって,Xは,相応の羞恥心,強度の嫌悪感を抱いたものと推認される。他方,Yが接触した部位は肩というにとどまり,また,上記行為が10分間などの長時間に及んだとまでは認められない、として慰謝料5万円とした。

 ⑶ 福岡高判令和元年6月19日労働法律旬報1954号55頁 損害55万円

伊藤進編『判例INDEXハラスメント事例種類別に見る裁判所の判断』163~163頁参照

  ア 事案

・被害者X(女性、職員)、加害者(男性、農業協同組合組合員)、被告Yは農業協同組合

・Yの元職員Xが、在職中に職務として随行した研修旅行の際の懇親会において裸になって接待するコンパニオンがいる等の性的嫌悪感を抱く環境下での就労を余儀なくされる、懇親会後の二次会及び二次会後に宿泊先に戻った後に、農協の組合員であるAから強制わいせつの被害を受ける等のセクシュアル・ハラスメント被害を受けたことについて農協の予防策や事後的対応が不十分であり安全配慮義務違反に当たるとして、農協に対して債務不履行を理由とする損害賠償を求めた事案。

・Yは過去の研修旅行の際に元職員からなされた報告等により、同人を前記のような態様である懇親会に参加させれば同人が組合員らの性的言動により多大の苦痛を覚え執務環境を著しく害されることを十分に予見可能であったということができ、雇用契約の付随義務として、前記のような態様の懇親会の実施がYの組合員らとの関係から容易に回避し難いのであれば元従業員がこれに参加しない選択肢を提示する等の再発防止措置を講じる義務を負っていたといえるところ、これを怠った。

  イ 損害額

慰謝料50万円、弁護士費用5万円を認めた。

 

3 コメント


 以上のいずれの事案も極めて問題のあるセクハラですが、慰謝料は50万円以下にとどまっています。セクハラによる精神的苦痛が極めて大きいことが適切に損害額に反映されていないと感じます。もっと、裁判所が変わらないといけないと思います。

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