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【解雇、セクハラ】職務上の地位が高い労働者によって継続的に行われた他の労働者に対するセクハラを理由とした解雇が有効とされた横浜地判令和3年10月28日労働判例1311号72頁、東京高裁令和4年5月31日 労働判例1311号59頁を解説します。

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1 本事件のポイント


本事件では、①どのようなセクハラであれば解雇が有効になるのか②指導や配置転換ではなくて解雇を選択したときにその解雇が有効となるのはどのような場合かを学ぶことができると思います。

 

2 事案の概要


 本件は、医療法人職員(被告代表者及び事務長に次ぐ管理職の立場にある次長)である原告が、複数の女性職員に対しセクハラ行為をしたことを理由に解雇された事案です。原告は解雇が無効であると主張し、地位確認と未払賃金等の支払を求めました。

 

3 セクハラの事実関係


 原告は、複数の女性職員に対し、身体に触れたり、性的な発言をしたりするなどのセクハラ行為を行っていました。

  • 原告は、職員に「いい女になれ」「俺が抱きたいと思うような女になれ」等の発言をしていた。
  • 職員に対しカウンセリングを行う際の心構えを指導するに当たり,度胸が大事であることを度々述べていたが,その際,人前で踊ったり混浴をしたりする度胸が必要である趣旨の発言をすることがあった。
  • また、「しんどいの?生理か」「彼氏はいるのか」「結婚を考えているのか」等と、プライベートな事項に干渉する発言もしていた。
  • さらに、原告は職員の頬や肩、背中などに触れることもあった。
  • 「例えばみんなでドライブに行って,すごくいいお湯で効能がめちゃめちゃ良い秘湯があって,車止めてせっかくだから入ろうってなったらみんな入れるか。」と尋ね,L’が「いいですね,入りたいです。」と答えると,にやにやしながら「混浴でだよ」と返した。

 

4 地方裁判所の判断


 裁判所は、原告のセクハラ行為は常態化しており、職場環境を著しく害したと判断し、解雇事由に該当する行為があったと認めました。

  • 原告は、被告代表者及び事務長に次ぐ管理職の立場にあり、職場環境を改善すべき立場であったにもかかわらず、セクハラ行為を繰り返した。
  • また、原告はセクハラに対する自覚を欠いており、改善を期待することは困難であると判断された(人前で踊ったり混浴をしたりする話は、度胸が必要であること等を説明するためにやったと主張した。)。

 以上のことから、裁判所は、本件解雇は客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であるとして、解雇権の濫用には当たらないと判断し、原告の請求を棄却した。

 

5 高等裁判所の判断


 控訴人(原告)は、セクハラ行為についての指導はなかったと主張しました(これは、解雇するにしても、まずは指導したうえで、改善されなければようやく解雇できるという実務の考え方に沿った主張だと思われます)。

 高等裁判所は、控訴人自身が(7年前にあたる)平成23年にセクハラ行為について上司から指示を受けていたことを認めており、裁判所はこれを、当時のセクハラ行為に対する注意と指導があったものと推認しました。具体的には、平成30年時点のヒアリングにおいて控訴人(原告)が「ま、これは、その、7年前にも同じようなこと、自分でもそういうのがありましたので。そういう行き違いが無いように、っていうのがあって。ま、報告も挙げたつもりではあったんですが、まあこれは録音をしていただいているんで、今ここでこう話すべきことかどうかわからないんですが、あの、7年前と全くシチュエーションは同じだな、ってふうに思ってまして。あの時も、あの、まあTさんとか北海道の方がこちらに来て、ま、もともと上司だっていうふうに思っていた3人の方が、そのこっちじゃなくてその北海道の方から来た人の指示に従えって、いう話の状態が起きた時に。そういう話が持ち上がるっていうパターンでしたので」という発言をしたことが録音されていました。

 また、控訴人(原告)は理事長及び事務長に次ぐ管理職の立場にあり、その他の職員は医師、看護師及び管理栄養士である上、被控訴人の各診療所の常勤事務職員の全員が女性であることから、配置転換等により解雇を回避する措置を講ずることも困難であったと認められると判断しています。

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